世界遺産『富岡製糸場と絹産業遺産群』の中心である富岡製糸場を巡ってきました。
ここ富岡製糸場は、明治日本における技術革新と近代化を示す産業遺産群であり、百年以上の時を超えて、当時とほぼ変わらぬ姿を今に伝えています。
この記事では、実際にこの目で見て感じた富岡製糸場の魅力や特徴をお伝えします。
これから富岡製糸場を訪れたいと思っている方や、富岡製糸場について知りたい方は、是非参考にしてください。
それでは旅のスタートです！
富岡製糸場の概要を知ろう
- 日本初の官営模範工場
- 日本の絹産業の近代化と世界での絹の大衆化に大きく貢献
- 世界遺産として登録
まず最初に、富岡製糸場の概要について紹介します。
1872年（明治5年）に、殖産興業による富国強兵を掲げた明治政府による最初の模範工場として誕生した富岡製糸場は、日本初の官営器械製糸場として、フランスの技術を取り入れ、技術者を養成し、日本各地に器械製糸技術を伝播させる役割を果たして、日本における絹産業の近代化を大きく牽引しました。
さらに富岡製糸場で生産された生糸は国内だけでなく、フランスやアメリカ等の海外へも輸出され、日本の生糸は明治末には生産量・輸出量ともに世界一となり、富岡製糸場は絹の世界的な大衆化にも貢献しました。
そのような近代化・大衆化への貢献が評価され、富岡製糸場は、蚕の生育や繭の貯蔵、更に生糸の生産に至るまで相互に連携していた田島弥平旧宅・高山社跡・荒船風穴とあわせて、『富岡製糸場と絹産業遺産群』として2014年に世界遺産に登録されました。
富岡製糸場へのアクセス・入場料
富岡製糸場は電車や車でアクセスすることが可能で、電車でアクセスする場合は、上信電鉄の上州富岡駅で下車して、そこから徒歩10分程度でアクセスできます。
ただ、上州富岡駅は電車の本数が凡そ1時間に２本程度と少なく、また田島弥平旧宅など、他の関連資産も併せて訪問する場合は、それらは公共交通機関でアクセスしにくい場所に立地している為、車で訪問することをお勧めします。
なお、富岡製糸場の周辺にはコインパーキングが多くあるので、駐車スペースを探すのにはあまり困らないと思います。私は富岡製糸場にほど近い「いなりパーク」に駐車しました。（駐車料金：100円/20分）
富岡製糸場への入場料は、大人1,000円/人（高校生・大学生：250円/人、小・中学生：150円/人）でした。
富岡製糸場の特徴
富岡製糸場に訪問するにあたり、押さえておきたい特徴を紹介します。
木骨レンガ造
木骨レンガ造とは、日本古来の木造の柱からなる骨組に、西洋由来のレンガ壁を積み並べた構造であり、和洋折衷の建築様式です。
柱・梁といった木骨に屋根の重みがかかり、壁の部分には力があまりかからない特徴があります。
その為、レンガだけで建てられた建造物よりも壊れにくいと言われています。
フランス積
フランス積とはレンガの積み方のひとつで、レンガの向きを長い面と短い面を交互に並べていく積み方のことです。
この積み方はフランスのフランドル地方やベルギーでよく見られ、もっともレンガらしく優美な見た目を形成します。
トラス構造
屋根を支える骨組みのひとつで、西洋から入ってきた建築技術です。
三角形を組み合わせた骨組みを持つ構造で、梁に直接力がかからない為、柱と柱の間の間隔を大きく取ることができます。
その為、日本古来の伝統的建築と異なり、柱のない広い工場空間をつくることができました。
富岡製糸場を散策しよう！
富岡製糸場の基礎情報もこれくらいにして、富岡製糸場内を紹介していきます。
正面入り口から入場していきます。
この正面入り口はフォトスポットとなっており、多くの人が写真撮影していました。
入り口を入り、左手奥の建物で入場券を購入します。
入場券を購入してまっすぐ進むと、最初の大きな建物である東置繭所があります。
この東置繭所は、創業時は1階が作業場、2階が繭の貯蔵庫として使用されていました。
現在は1階のうち約半分は展示室となっており、富岡製糸場の概要や歴史などを学ぶことができます。
また、木骨レンガ造やフランス積の見事な建築美も必見です。
東置繭所の裏側からも木骨レンガ造やフランス積の建築様式が見て取れます。
1階の展示室には、富岡製糸場だけでなく、世界遺産の各構成資産の当時の姿も模型で展示されていました。各資産の雰囲気を掴むのに良いですね。
上から順に、田島弥平旧宅、高山社、荒船風穴です。
続いて社宅76です。
社宅76は富岡製糸場内に敷設された社宅群の1棟で、当時の社宅の内装や実物の蚕を見学することができます。
時代を感じされるレトロな内装で、どこかノスタルジックな印象を受けます。
生きている蚕も展示しています。
白いのが蚕で、茶色いのが人工飼料です。
続いて、西置繭所に向かいます。
パッと見た感じ、東置繭所と大きな違いはありませんが、よく見ると、1階は部分的にレンガがなく柱だけの造りでした。（以下写真の右下のあたり）
また、後から調べたところ、1階のレンガが積まれている箇所は、2階のフランス積とは異なり、平積になっているようです。
西置繭所も内部に入ることができます。
1階部分はギャラリーとなっており、2階は当時の繭倉庫の姿を残しています。
写真は繭倉庫ですが、こちらの構造もトラス構造でしょうか。
続いて、繰糸所に向かいます。
ここ繰糸所は、繭から糸を取り出す繰糸を行っていた場所で、繰糸所としては当時世界最大規模を誇っていたそうです。見事なトラス構造が見て取れます。
繰糸機も操業停止時（昭和62年）のままの姿で保管されています。
続いて、首長館（ブリュナ館）です。
ブリュナとはポール・ブリュナのことで、フランス人技師として、ここ富岡製糸場の設立を指揮した人物です。
ブリュナはこの首長館に任期満了まで家族とともに暮らしていたようです。
続いて、寄宿舎です。
こちらは女性従業員用の寄宿舎であり、写真の寄宿舎はブリュナ館に隣接している榛名寮で、写真に写っていない寄宿舎としても、妙義寮、浅間寮があります。
女性従業員の多くは、操業停止に至るまで、この寄宿舎で生活していたようです。
富岡製糸場内には診療所もありました。
もともと富岡製糸場の設立者がフランス人のポール・ブリュナであったことから、設立当初は診療所に常駐していた医師もフランス人だったそうです。
またこの診療所は昭和時代に建てられたもので、最初の診療所は上記の寄宿舎付近にあったようです。
最後に女工館です。
この女工館は明治6年に建設された建物で、フランス人の女性技術教師4名の為に建てられたそうです。
写真からは少し分かり難いですが、この女工館も木骨レンガ造の構造となっています。
女工館で富岡製糸場の見学はひと通り完了です。
少々ゆっくりめに見学しましたが、所要時間は2時間程度でした。
また富岡製糸場の正門前には、まゆこもりやシルクミルクといった富岡名物の和菓子店等も軒を連ねているので、散策後の小腹満たしにもよいのではないでしょうか。
富岡製糸場の紹介は以上です。
是非一度現地に赴いて、日本の近代化を牽引した産業の歴史を肌で感じてみて頂ければと思います。
それではまた次の旅でお会いしましょう！
